8世紀ごろ北欧スカンジナビアで通商や貿易を営んでいた人たちが富を求めて近隣諸国に攻め入るようになり、卓越した航海技術を有する彼らは「ヴァイキング」と呼ばれヨーロッパの人々から恐れられました。

現代では「ヴァイキング=海賊」では無くスカンジナビア半島に住んでいた人々全体を指す言葉として認識されています。
故郷では農民であり漁師であり商人だった彼らが当時何等かの事情によって外国に攻め入るようになりますが、その理由には諸説あります。
・キリスト教勢力による不平等な宗教差別に反発した
・周辺諸国に比べ航海術はもちろん工業的な技術力も優れていたため、より富を求めて侵略の道に進んだ
・ヨーロッパでは民族大移動の真っ只中であり、より豊かな土地への移動は極めて自然な行動だった
などの理由が言われていますが明確な理由はわかっていません。
直接的なきっかけは解りませんが、理由はどうあれ、極めて凶暴な侵略者が周辺諸国になだれ込んだのは事実であり、当時のヨーロッパの人々にとっては脅威以外のなにものでもありませんでした。
その侵略者達は航海術も工業の面でも極めて優秀な技術力を擁していたので、侵略をうけたヨーロッパ地域はなす術がありませんでした。
当時の航海技術では陸が目視できる状態でないと航海自体が危険でしたが、ヴァイキングだけは唯一陸から離れても航海できる技術を持っていたと言われます。
また、彼らの船は風による帆走もオールによる手漕ぎもできる高機能船で、構造的にもそれまでには無かった「竜骨」と言う、船底を船首から船尾に背骨のように一本筋を通す構造を発明したことで、他の国の船が行けないような水深の浅い所にも容易く行けました。場合によっては陸の搬送さえも可能だったので、内陸部の町や村も襲われたのです

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記録上、最古と言われる793年イングランド北東の小島にあるリンディスファーンの修道院がヴァイキングに襲撃された事件は西欧のキリスト教国を恐怖のどん底に陥れます。
彼らヴァイキングは教会や修道院でも平気で襲いました。
一般の領主の邸宅に比べ警備は手薄で、高価な装飾品や財宝が容易く手に入れられたので、平気でと言うより、むしろ好んで襲ったのです。
彼らが恐れられた理由は「残虐な掠奪行為」にあることは間違いありませんが、それと共に彼らが「異教徒だった」こともヨーロッパ人の恐怖を増幅させました。
「未知の神を信仰し怪しげな文様と武器を携え、教会であろうが修道院であろうが情け容赦なく襲ってくる」
そんな侵略者たちを恐ろしく感じるのは当たり前です。

約150年にわたってヨーロッパを荒らしまわったヴァイキングも9世紀にはいると占領した土地に定住する者が現れます。
例えばアイスランドは当時は人が住んでいませんでしたが、この島を発見したヴァイキングがそのまま定住したと言われています。
またアイルランドのダブリンもヴァイキングの居住地でした。
もともとゲルマン民族の大移動の際、北欧に残った人たちがヴァイキングだと言われています。
ゲルマン民族がヨーロッパに同化したように、ヴァイキング達もいつしかヨーロッパ文明に同化していき海賊ヴァイキングとしては歴史の表舞台からは消えていったのです。