エンリケ航海王子亡き後、ポルトガルでは王子の海洋事業を継承するか撤退するかで大いに悩みます。
エンリケ自身は探検航海に徹しており、部下たちにも「目先の利益に惑わされるな!探索にのみ邁進せよ!」とはっぱを掛けていました。
このように「商売っ気」には欠けていたエンリケの航海事業は経済収支としては大赤字でした。
しかし海洋事業自体は、もし成功したあかつきには計りしれない成功報酬が期待出来たので、あっさり撤退するには惜しくもあり、簡単には決められない非常にもどかしい状態だったのです。
そんなとき、1つの妙案が浮かびます
この事業を民間の手に委ねようというものでした
そしてリスボン在住の大商人「フェルナン・ゴメス」と契約を結び、アフリカ西海岸での貿易の独占を許す事と引き換えに、ゴメスは毎年640キロメートルの南下(航路を新たに開拓)の義務を負うというもので、契約期間は5年間。
これによりポルトガルは経済的な負担を全く負うことなく、自国民による海洋事業の継続が実現しました。
またゴメスにとっても新規に開拓した航路の独占によって莫大な利益を挙げる事が出来ますので悪い取引ではありません。
ゴメスは5年間の任期中に契約通りアフリカ西海岸を3200キロメートルにわたって開拓しました。
それは赤道を越えて南半球に達するほどの大成果です。
ゴメスの大成功によってポルトガルはこの事業に商業的な価値を見いだし契約の更新はせず海洋開拓事業は以後国有化しました。
一方ゴメスは莫大な利益を得たと共に「航海商人フェルナン・ゴメス」としてポルトガルの歴史に名を残す事になったのです。
