1856年掠奪許可状そのものを禁止する条約「パリ条約」に主要各国が調印したことで私掠船は完全に消滅しました。
しかしそれで海賊が消滅したわけではなく、軍隊並みの大規模な海賊が公に活動できなくなったに過ぎず、小規模な海賊は依然として残りました。
それは21世紀の現代でも続いており、例えばソマリア海賊などはメディアでも良く取り上げられますので皆さんもご存知かと思います。

ソマリアだけではなく世界で海賊による被害はIMB(国際海事局)のレポートによると
2011年の上半期だけで266件もの被害が報告されており、そのうち日本の船舶が関係している事案は12件あります。
今ここを読んでいる皆さんの中で、この数字を聞いて驚かれた方も多いのではないでしょうか?
「これでは16~18世紀の海賊黄金時代とたいして変わらんのでは?」
とさえ思えます・・・・
平和な日本に住んでいると「海賊」と言う存在はファンタージーの世界に生きるキャラクターのように思えますが、
海岸沿いの貧しい地域に暮らす人にとっては、海賊が職業として選択肢の一つになってしまっている現実は否定できません。
このように現代においても海賊事情は極めて深刻な問題なのです。
では、現代の海賊行為とは具体的にどのようなものでしょう?
IMB(国際海事局)によれば襲撃された商船の多くは係留中に船に乗り込まれてしまう、つまり陸上からの襲撃だそうで、それはもう単に船を狙った盗賊であって海賊と呼ぶには違和感がありますが、IMBの定義ではこれも立派な海賊行為だそうです。
<IMBによる海賊の定義>
「窃盗ないしはその他の犯罪を犯そうとする意図をもち、それを実行するための能力を備えて、船舶に侵入する行為」
もちろん有史の海賊と同じように運行中襲われるケースもありますが、現代特有の様々な特色が海賊問題をややこしくしています。
まず現代の商船は武装していません
仮に海賊の船舶が小型で人数が小規模であっても、彼らは武装しているので、船に乗り込みさえすれば制圧は容易く出来てしまいます。
また現在は公海とか領海とかの規定が細かくなった為、海賊達は他国の領海に逃げ込んでしまえば、海軍にしろ沿岸警備隊にしろ手が出せません。
それどころか国によっては海賊を公では非難しながら、実のところ黙認するケースさえあるのです。
このように現代の複雑な国際事情がことを難しくしている点は否めません。

人間の歴史では、人が船を使って物を運ぶ事を思い付いたと同時に、それを奪おうとする海賊が現れました。
それこそ紀元前から世界各地で起った暴力による略奪行為です。
そしてそれは21世紀の現代にも続いています。
海賊の歴史は終わってはいません。
海賊はけっして過去の産物などではなく、現代でもどこかで起っている現実なのだと
私達も知っておくべきかもしれませんね・・・・・