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エドワード・イングランド

エドワード・イングランドはアイルランド出身で元々はスループ船(一本マストの小型帆船)の航海士だったが、ジャマイカで海賊クリストファー・ウィンターに捕らえられ、そのまま自らも海賊となった。



彼は思慮分別のある人で強欲でなく、それでいて勇気もある海の男だったとチャールズ・ジョンソンの「海賊史」で語られている。
捕虜に対しても虐待等に及ぶことを非常に嫌悪する海賊らしからぬ正義感を持った人だった。

しかし現実的に当時の海賊たちの大半は弱者を餌食にして私欲を満たしたいだけの荒くれ者の集まりだったので、イングランドのような人物の行動は海賊仲間からは受け入れてもらえない事のほうが多い。


ある日イングランドの船で起こった海賊としての日常の一部をご紹介する


イングランドの海賊団はアフリカ・シオラレオネ沖でブリストル籍の船舶カドガン号を襲った。
カドガン号の船長スキナーはボートで海賊船に乗り移るよう命ぜられたが、そこで最初に目を合わせた海賊の顔を見て驚いた。

なんと、その海賊は元々スキナーの船の甲板長を務めていた男で、給与を支払いたくない為に軍艦に乗せてしまおう(売ってしまおう)と思いつき無理やり解雇した男だった。

その男は軍艦勤務についたが、脱走して周航船で国に帰ろうとしたところをイングランドの海賊船に襲撃され、そのままイングランドの下で海賊となったのだ。

「これはこれはスキナー船長じゃないですか、会いたかったぜ。あんたにはずいぶん借りがあるからたっぷりお礼しなきゃな」

そういうと男は仲間にスキナーを押さえつけさせガラスの瓶で殴った。
スキナーは血まみれになりながら助けを請うたが海賊はそのような哀願には耳を貸さず甲板中を引き回し、飽きるまで鞭で打ちすえた挙句
「お前は部下にやさしい船長だったから安らかに死なせてやるぜ」

そう言うとピストルでスキナーの頭を撃ち抜いた。


この話に本編の主人公エドワード・イングランドは登場しないが、この顛末はまぎれもなく彼の船で起こったことである。
当時の海賊として特に珍しくもない日常ではあるが、統制のとれた海賊船では船長の許しもなくこのような殺人が起こることは少ない。

船長の意思でなくこのような行為が船員たちによって日常起こってしまうところにイングランド海賊団の危うさが潜んでいた。

イングランドが仲間に対しても、また敵に対しても寛容な海賊だったことは、彼の長所でもあると同時に後々イングランド自らを破滅に導くことになる大きな火種でもあったのだ。

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エドワード・イングランドの海賊旗


海賊としては非常に優秀で、アフリカ沿岸を航行する船を20隻以上襲い、ポルトガル軍艦とも互角に戦えるほどの戦力も持つ大物海賊だったイングランドだが、
あるとき、襲撃した大型帆船カサンドラ号を大激戦の末に拿捕した際、敵方船長のマクレイに対して好意を持ってしまい船も積荷も与えて逃がしてしまった。

この戦いでは海賊側にも相当大きな犠牲が出た事もあって海賊たちの多くはマクレイを助けたことに納得できなかった。
それどころか助けたマクレイが自分たち海賊団の討伐隊を組織したと聞くに及んで海賊たちの怒りは船長のイングランドに集中することになる。

海賊たちは船長イングランドの気まぐれな行為がすべての元凶であるとして、イングランドから船長のイスを取り上げ無人島に置き去りにした。

無人島に置き去りにされたイングランドだが、部下たちにも多少の温情はあったようで、全く何もない餓死を待つだけの島ではなかった。
イングランドは板切れで作ったボートで脱出し命からがらマダガスカルに戻ったが、もうかつてのような生活に戻ることはかなわず失意のうちに死亡した。