アイルランドで私生児(父の愛人の子)として生まれた。

彼女の父親は高名な弁護士だったが、彼女の素性を隠す為に男の子の服を着せて周囲には「親せきの子供」と説明していたが、それが妻にばれて父親は彼女と彼女の母親を連れてアメリカに渡り、農場経営で大成功を収める。

このように私生児とはいえアンは両親も健在で経済的にも何不自由なく育った。

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アン・ボニー

ただ彼女の気性の荒さは相当なもので、癇癪をおこして使用人をナイフで刺し殺してしまった事もあるほどだ。

一応は資産家のお嬢さんなので縁談には事欠かなかったが、元来男勝りの彼女はもっと自由な生活を求め、海賊出身のジョンボニイと恋に落ち、駆け落ちしてアメリカ東海岸にやってきたが、ここで運命の男ジョン・ラカムと出会う事になる。

ジョン・ラカムはキャラコ(木綿)の衣服を好んで身にまとった洒落者で「キャラコジャック」と言われていた。

ラカムはカリブ海で海賊船の船長をやっていたが恩赦によってバハマで生活しており、アンの経営する酒場で2人は出会いたちまち恋に落ちた。

厳格なカトリック社会では不倫はもってのほかであり、それ自体が「罪」として裁かれる時代だ。

しかしアンは夫を捨てラカムと共に海賊稼業に身を投じる道を選び、海に出ていったのだった。

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アン・ボニー

海で身籠った彼女は一時ラカムの船から離れキューバの親戚の家で出産するが、無事出産を終えるとまたラカムの船に乗り込んだ。

そのすぐ後、ラカムの海賊団はある客船を襲い拿捕するが、捕虜の中から新たに海賊として仲間に加わった者の中に若く美しい少年がいた。

アンはたちまち夢中になったが、その少年は実はメアリー・リードと言う女性で、アンもメアリーもお互いに男装していたので、男同士として妙に気が会い、ある意味奇妙な友情が芽生えたのだった。

華奢な優男(メアリー)に対して想いは募るばかりのアンは、あるときメアリーに自分が女性である事を伝え、思いのたけを打ち明けた。

アンに女性である事を突然告げられたメアリーは驚いたが、実は自分も女性である事をアンになら打ち明けることにした。

アンは酷くがっかりしたが、今度は女同士として2人は今まで以上に親密となり、親友としてお互いを支え合う事になる。

あるときラカムは2人があまりにも仲が良いのを妬み、メアリーに銃を突きつけた事がある。

そのときメアリーはラカム船長に女性である事を隠し通す事は難しいと観念し、上半身をはだけて胸をラカムに見せ自分も女性である事を打ち明けた。

ラカム船長も驚いたが、もともとメアリーの戦闘の腕を高く評価していた事もあり、根っからの自由人であるラカムはむしろこの状況を面白がり、その後もラカム海賊団の一員としてメアリーを受け入れたのだった。

アンとメアリーはいつも一緒に並んで戦い、2人とも男以上の戦闘能力を発揮した。

彼女たちの最期の闘いは「ラカムを逮捕せよ」とジャマイカ総督の命を受けた私掠船が襲いかかって来た時だった。

ラカムらは酒盛りの最中に突然襲われ、必死に逃げるがとうとう追いつかれ大量の敵が船になだれこんできた。

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左からアン・メアリー・ラカム

激しい戦いも時間と共に戦況ははっきりラカム側が不利とわかる旗色になり、とうとうラカム側で戦っているのは2人だけになっていた。

ところがその2人がやたら強く、しなやかな動きで剣を操り、鉄砲を撃ちまくり斧を振り回す。

そのうち、他の者が隠れている船倉に鉄砲を撃ち込み「男らしく戦え!」と叫び、叱咤するほどだった。

2人ともよく戦ったが、多勢に無勢で戦力差は如何ともしがたく、捕縛されてしまう。

船長のラカムはじめほとんどの者が絞首刑と決まったが、アンとメアリーの2人は妊娠を理由に死刑の執行が猶予されることになった。

当時は妊婦を殺す事は子供も殺す事になるとして死刑の執行は猶予される事が当たり前だったのだが、それ以前に「最後まで勇敢に抵抗したあの2人が女性だった」と言う事実に世間は驚き衝撃を受けたのだった。

当時は女性が船乗りとなること自体よしとせず、まして「女で海賊」なんて常識の遥か外の話なのに、女海賊が2人も同じ海賊船にいて、しかも2人とも最強の主力として戦っていたなどと言う事は全く考えの及ばない常識はずれな事だった。

アン・ボニ―は夫であるラカムが絞首刑となる前日、彼に会う事を許されたが、そこには最愛の恋人との最期の別れなどという情緒はみじんも無かった。

「あんたが男らしく最後まで戦っていたなら犬のように吊るされる事も無かったんだ」

と言ってラカムを罵ったのだ。

最期まで勇敢に戦ったのが自分と親友の女性メアリーリードだけだった事をまだ怒っていた。

メアリーは子供が生まれる前に獄中で熱病によって死亡。

アンは牢屋で出産した後、さすがに赤ん坊をかかえた母親を死刑にするのは躊躇われたのか、なんども執行が延期されるうち、何処かに消えてしまったという。

彼女の父親が有力者だったため、裏から手をまわしたとも言われるが、真相はわかっていない。